日本酒

発酵ってそもそも何だ?アルコール発酵と、清酒酵母の働きを徹底解説

日本酒を造るのに必要不可欠な工程、それが発酵。醤油やみそ、鰹節など、発酵食品は古くから日本の生活を支えてきた重要な文化であり、世界中にもヨーグルトやチーズなど、様々な発酵食品があります。

身近な発酵食品ですが、そもそも発酵ってなんなのか。お酒を造るアルコール発酵を中心に解説していきます。

そもそも発酵ってなんなの?

発酵とは、微生物が人間にとって良いものを作り出すことを指すぞ!

発酵の基本 

「発酵」を広辞苑で調べると、以下のように出てきます。

はっ‐こう【発酵・醗酵】‥カウ
①一般に、酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程。本態は酵素反応。酒・醤油・味噌、さらにビタミン・抗生物質などはこの作用を利用して製造する。狭義には、糖質が微生物によって酸素の関与なしに分解する現象を、また広義には、これと化学的に同じ反応過程である生体の代謝(解糖系など)、および微生物による物質生産を指す。
主な発酵(表)

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最後の文章「微生物による物質生産」が一番イメージしやすいかもしれません。

微生物が、酵素の力を利用してAという物質からBという物質を作り出す化学反応を発酵と呼びます。付け加えると、一般的には微生物が有益な物質を作ることを発酵と呼ぶことが多いです。微生物の働きにより、見た目やにおい、味に変化が起きるという点では同じですが、物が腐ったり食中毒になる物質を作り出す反応は有益なものとは言えませんね。この不利益な反応は「腐敗」として発酵とは区別されます。

発酵・・・人類にとって有益な微生物が働き、物質を分解、変化させること(酒、みそ、醤油、ヨーグルトなど)

腐敗・・・微生物の働きにより、人類にとって不利益な変化が生じること

なぜ酵母はアルコール発酵をするのか

アルコール発酵を担っているのは酵母。なかでも日本酒に使用される酵母は「清酒酵母」と呼ばれます。

酵母たちはなにも、我々人類においしいお酒を届けるためにアルコール発酵を頑張っている訳ではありません。当然、酵母にとってメリットがあるからアルコール発酵をするわけです。

酵母は通常、私たち人間と同じように「呼吸」をしてエネルギーを獲得しています。この呼吸は、酸素が必要な反応となります。しかし、日本酒を造る発酵中のタンク内はほぼ無酸素。呼吸ができる状況にはありません。

そんな過酷な状況に陥った時のために、酵母はもう一つのエネルギー獲得方式を持っています。それがアルコール発酵。

無酸素状態でも生き延びるために酵母はアルコール発酵を行いエネルギーを獲得しています。その際に副産物として仕方なくできてしまうアルコールを、私たち人間はありがたく頂戴しているという構図になっています。

呼吸とアルコール発酵

呼吸とは、糖(グルコース)を分解し、エネルギーを取りだす反応のこと。反応式は以下の通りです。

C6H12O6 + 6H2O + 6O2 → 6CO2 + 12H2O+38ATP

この、ATPというのがエネルギーを指し、糖一つからエネルギーを38個獲得できる反応が呼吸。

これに対してアルコール発酵もエネルギーを取り出す反応を指しますが、エネルギーの獲得効率に違いがあります。アルコール発酵の反応式はこちら。

C6H12O6 → 2C2H5OH+2CO2 +2ATP

呼吸と比べるとその差は歴然。糖一つからエネルギーをたった2つしか取り出せない反応がアルコール発酵。非常に効率の悪いエネルギー獲得様式であることが分かります。

日本酒の製造環境に酸素が無いからと言ってあきらめることなく、呼吸からアルコール発酵に切り替えてなんとか生き延びているということですね。さらに言うと、アルコールは殺菌消毒にも使われる物質。日本酒のアルコール度数では殺菌などできませんが、ほかの微生物をけん制し生存に有利な状況を作り出す役割も持ちます。

酵母は人類にアルコールを提供するばかりか、意外と丈夫で攻撃的な微生物なんですね。

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