醸造アルコールとは?アル添酒を解説!

日本酒マニアが、「これはアル添の酒だ」って言ってたけど意味がわからなかった。アル添ってなんなの?

日本酒に愛好家でなければ耳慣れない言葉かもしれないね。「アル添酒」は、発酵が完了したもろみに醸造アルコールを加えて造られた日本酒のことを指すぞ。

えっ?日本酒に後からアルコール入れるのってありなの?なんかかさまししてるんじゃないの?

お米に水と酵母を入れて発酵させたものが日本酒のはず。そこにアルコールを加えるなんてか確かにさましのように聞こえるが、アルコール添加には立派な役割があるんじゃ。純米酒こそ日本酒と思っている純米至上主義の愛好家はもったいないことをしているぞ!

「かさまししている」、「悪酔いする」などとよくないイメージを持っている人もいるかもしれんが、アルコール添加の正義について、実際に日本酒の製造に携わっている蔵人視点で解説していこう。

醸造アルコールとは

そもそも醸造アルコールってなんなの?

醸造アルコールとは、サトウキビなどを原料として製造されたほぼ純粋なアルコール(原料用エタノール)のこと。言ってしまえば、香りのついていない、めちゃくちゃアルコール度数の高い焼酎のことじゃな。

この醸造アルコールをもろみに添加して造られたのがアル添酒。米の他にアルコールを使用して製造されているため、ラベルには特定名称として「純米」と書けなくなり、「大吟醸」、「本醸造」などと表記される。

表示義務があるから、アル添かどうかはラベルを見れば一発でわかるぞ!

アル添の歴史は古く、かつては腐敗を防止するために焼酎を入れたことが始まりではないかとされています。焼酎やウイスキーといった蒸留酒は基本的には腐ることがありませんからね。混ぜたら腐らないんじゃないかという発想だったと推測されます。

どうしてアル添するのか

醸造アルコールがなんだかはなんとなくわかったけど、発酵させればできるアルコールをなぜ追加で入れるの?

アルコールを入れるからと言って、アル添は断じてかさましではないぞ。

日本酒をおいしくするための先人たちの知恵が凝縮したれっきとした技術の一つなんじゃ。

ひとつづつ紹介していくぞ!

  • 香りを引き立てる
  • すっきり軽快な飲み口に
  • やんなきゃ損

では順に解説していきます。

香りを引き立てる

日本酒の最大の魅力のひとつは、吟醸香と呼ばれるフルーティで芳醇な香りにあります。吟醸香の中には、バナナ、リンゴ、マスカットなど、果物に例えられる甘くてみずみずしい香り成分が含まれています。この香り成分の多くはアルコールによく溶ける性質を持っており、お酒の中に溶けている香り成分が徐々に空気中へ拡散し、私たちのもとへ届いています。

つまり、アルコールと香り成分の相性は抜群で、アル添をすることによって、空気中に飛散していくはずの香りがお酒に残ってくれるのです。アルコールが香りを抱き込んで離さないから、香り高くておいしいお酒になるというわけですね。

アルコールが香りを連れてきてくれるんだね!

すっきり軽快な飲み口に

純米酒の魅力は、米そのもののうまみやコク、ふくよかさを堪能することにあります。これらを楽しむことこそ、日本酒を味わう時の醍醐味と感じる飲み手はたくさんいます。

その一方で、飲み手やシチュエーションよっては、「重い酒」と感じる場合もあります。こういった特徴を、すっきり軽快な味わいに仕上げてくれるのも醸造アルコールの役割です。個人的な感想ですが、アル添酒はそのすっきりとした口当たりから、食中酒に適したお酒が多いように思えます。飲みやすさを向上させ、飲み飽きしないお酒にしてくれると思えば、醸造アルコールも悪くないですよね。

飽きずに飲み続けられる日本酒というのも、幅広い人に愛される日本酒の特徴の一つだね。

やんなきゃ損

ここで一つ、本末転倒なことを言いますが、純米酒のなかにも香り高く、すっきり軽快なお酒はたくさんあります。

つまりアル添などしなくても、香り高くて飲みやすいお酒は作れるんです。現代のお酒造りは技術が向上した上に情報共有も昔とは比較にならないほど盛んに行われています。日本酒業界が今後も伸びていくためには若い層に飲んでもらう必要があり、若い世代の多くは飲みやすい軽快なお酒を好む傾向にあります。また、昔のくさい日本酒とは違う、フルーティな香り高いお酒に人気は傾いています。こうしたことから、純米酒、アル添酒ともに飲みやすい日本酒が市場多く出回っています。

あれ?アル添しなくてもすっきりしたお酒ができるなら、アル添の必要性って...?

現在のお酒造りにおいては、香りと軽快さだけを求めてアル添を行う時代ではなくなっているのかもしれません。

じゃあアル添しなくてよくない?という話なんですが、そういう問題でもありません。

米と米麹の他に、原料として唯一認められているものが醸造アルコール。水や米の他に入れてもいい原料として明らかに異質なアルコール。こんな成分の恩恵が香りとすっきりさだけなはずがありません。というか、すっきりさなどというアバウトな表現すらも細分化していくことでさらに味を突き詰めていける可能性を秘めいているように思えます。

こんな面白い原料、使わないなんて損なんです。

酒蔵ごとに味の幅をもたせ、個性を出して日本酒業界をけん引していくためには、醸造アルコールも大きな武器となる訳じゃな!

アル添はなぜ悪者扱い?

アルコールを添加していると最初に聞いたときはびっくりしたけど、理由がわかると面白いね。

それでも、アル添に悪いイメージがついてやまないのはどうしてなんだろう。

それは、アル添が悪者だった時代が実際に存在したからなんじゃ。

昔は確かにかさましのために醸造アルコールが使われ、低品質な日本酒が数多く出回っていたことがあるというのが大きな理由じゃな。

アル添酒に対してなんとなくよくないイメージがある人の気持ちはわかります。日本人の多くは、「添加」と聞くと人工的な印象があり敬遠してしまう原因になることは想像にかたくありせん。無農薬、無添加、オーガニックが大好きな日本人。「純米」の響きもいいですね。ピュアなお酒という感じがします。一方で「アルコール添加」。ちょっと怪しい感じがします。

言葉のイメージの他にも、アル添について少し調べたことのある人は「三増酒」という言葉に出会ったことがあるかもしれません。「三増酒」とは「三倍増醸酒」の略。日本酒の悪しき歴史の一つです。

現在でこそ、おいしくて高品質な日本酒が好まれる時代になりましたが、かつてはコストパフォーマンスを重視して経済的なお酒をバンバン安売りしていた時代がありました。その時代には、アルコールや糖分、水、旨味成分などをジャバジャバ投入してかさまししたことにより、元のお酒の3倍にまで量を膨らませたお酒が横行していました。これが「三増酒」。アル添のイメージダウンにつながった張本人です。

現在では酒税法が改正され、いわゆる「三増酒」の製造自体は可能ですが、こういった商品を「清酒」すなわち日本酒と名乗ることは許されません。つまり、現在の日本酒にあくどいかさまし酒は存在しないのです。

かつて悪役だった醸造アルコールは、お酒の幅を広げてくれるスーパーマンです。

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飲まず嫌いはもったいない!アル添酒も楽しんでみよう!

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